泡盛ハイサイ★海次朗

5年前の早春に　義母が他界しました。

彼女にとって　うちの長女が　初孫でした。

いつも　ほんとうに　よく　可愛がってくれました。

妹ができたときに　いちばんはじめに

「お姉ちゃんを　じゅうぶん可愛がりなさいね」

そう言われて　僕らは　きょとんとしました。

妹に皆が気をとられているうちに　上の子がさみしい思いをしないように。

そういう心配りが必要だということを　教えてくれたのは　彼女でした。

彼女はよく　孫の手を引いて　ふたりで散歩に出かけてくれました。

どうやらそれは　ひみつのふたり旅　だったらしい。

近所を歩いて　犬をかまって　

公園でブランコにのって　花を見て　

路線バスに乗って　ちょっと遠出して

和喫茶店で　おだんご食べて。

そんな　あたたかな記憶がいまも　長女の中には宿っているらしい。

義母がある日　大阪の実家から神戸に遊びにくるときに

重い思いをして　鉢植えのムスカリを持って来てくれました。

「あの子　紫色が好きみたいだからね」

そう言って　置いていってくれたこの花。

今年も　彼女の命日のちょっと後に　咲きました。

かあさん。見てますか。見守ってくれていますか。

今年も　綺麗に　「ばーちゃんのムスカリ」咲きましたよ。

あの子も　もうこの春で　小学校６年生です。